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23/07/27

中小企業にこそデザイン経営を取り入れるべき理由

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いつもご覧いただきありがとうございます。
レモン代表の宇尾です。

突然ですが皆さんは「デザイン経営」をご存知でしょうか。
2018年に経済産業省と特許庁が「『デザイン経営』宣言」という政策提言を発表して以降、企業においてデザインを活用し、企業価値と競争力を高める必要性が問われてきています。

デザインと聞くと、製品のデザインや、店舗やオフィスの外観、チラシ広告などの見た目部分のことを想像するかと思います。おおむね間違いではありませんが、ことデザイン経営においてその定義はやや異なる印象を持つかもしれません。

「『デザイン経営』宣言」でのデザイン経営の定義を以下に一部抜粋します。

「デザインは、企業が大切にしている価値、それを実現しようとする意志を表現する営みである。それは、個々の製品の外見を好感度の高いものにするだけではない。顧客が企業と接点を持つあらゆる体験に、その価値や意志を徹底させ、それが一貫したメッセージとして伝わることで、他の企業では代替できないと顧客が思うブランド価値が生まれる。

さらに、デザインは、イノベーションを実現する力になる。なぜか。デザインは、人々が気づかないニーズを掘り起こし、事業にしていく営みでもあるからだ。供給側の思い込みを排除し、対象に影響を与えないように観察する。そうして気づいた潜在的なニーズを、企業の価値と意志に照らし合わせる。誰のために何をしたいのかという原点に立ち返ることで、既存の事業に縛られずに新たな事業を構想できる。」

まさにデザイン経営とは、企業のパーパス(存在意義)を見定め、ブランドとイノベーションを通して、新たな価値を創造する、その経営手法のことをいいます。



デザイン経営の必要性が高まっている理由

上記の「宣言」から、デザインは単なる「カタチ」をきれいに整えるだけのものではないということがお分かりいただけたかと思います。

ではなぜデザイン経営を取り入れる必要性があるのか。
これはビジネスにおいての危機感の高まりが起因していると言われています。

グローバル化やデジタル化が進み、情報やお金の流れの複雑化、高速化が起きたことで、既存産業のビジネスモデルを根底から変えなければならなくなってきています。今までは未来は過去から予測し、戦略を立て、適切に実行すれば成功できるという科学的合理主義の考え方が重視されていました。

しかし、変化の激しい現代では、そうした過去の成功体験だけでは未来を予測することはほぼ困難になってきています。

最近の新型コロナウイルス、世界情勢の変化による原油や小麦などのコモディティ価格の高騰、そして円安。

世の中の変化が早く、先行きが不透明となっているのがまさに「いま」であり、「正解のない時代(VUCA)」でもあるのです。

デザイン経営では、そのような時代を生きる「答え」として今もっとも注目されています。海外では「Apple」や「Google」「スターバックス」「ダイソン」、国内でも「良品計画」や「ダイソー」、「マツダ」など、名だたる企業がデザイン経営を取り入れ成功しています。

デザイン経営への考えは、海外では研究が進んでおり、デザインへの投資を重視する企業ほど高いパフォーマンス(利益)を発揮していることが示されています。海外では主流の考え方ではありますが、国内ではまだまだ浸透していないと感じます。



デザイン経営の具体的な取り組み方

デザイン経営の具体的な取り組み方として、まず経営者自身がデザインを理解していく必要があります。

前記でも述べたようにデザインは「カタチ」だけでなく、経営の根幹を担うほど影響のあるものです。
組織内の共有はもちろん、その成果を正しく評価することも、良いデザイン人材を効果的に採用し活用することも、まず経営者自身がデザインを正しく理解し取り入れることが大前提となります。

デザインにおいて大事な考えとして、歴史的ルーツをたどった時、デザインには三つの特性があると言われています。

①常に人から考える
企業や技術の理論によるものづくりだけでなく、製品をつくる人、使う人の幸福に資するものづくりを行う。

②カタチにする
人や社会の役に立つことを目指し、抽象(考え)を具体的なカタチにする。

③美と調和を大切にする
様々な要素の関係が最適化された状態を目指す。

デザインとは、身のまわりのあらゆるものを「より良くする」ために存在している、またはその考え方ということになります。「これからのデザイン経営」の著者の永井一史さんは、デザインの本質は「社会や生活者と共有できる課題を発見し、それを解決し、世の中に調和を生み出すプロセス」としており、ただ単に見える部分だけでなく、見えない部分までを設計してこそ、デザインは価値を持つことを説いています。

なので経営会議、または事業戦略の上流からデザイン責任者をおく、または関与させることがデザイン経営を行う第一歩となります。ただ現実的に、そうした人材にリソースが投入できないという企業様も多いかと思います。その場合は外部のデザイナーとパートナー契約という形も検討しましょう。大事なのは経営の中核にデザイナーを関与させることです。

経営にデザイン思考を取り入れることで、企業本来の思いや、価値を見いだし、具体的なカタチに落とし込み、社内外に一貫したメッセージとして伝える。それらに共感する人が増えることでブランドは醸成していく

冒頭の「『デザイン経営』宣言」抜粋にもある通りですが、短期的な成果だけではなく、長期的な視点として、将来会社が社会に対してどういう価値を実現したいのか、提供していきたいのかを育てていく必要があります。それにはデザイン経営が有効な経営手法としてベターな手段になる。その流れはもうすでに来ていて、大手企業にはない特化した技術力、企業文化や風土を持つ中小企業にこそ「デザイン経営」を取り入れてほしいと思います。

時代は変わり、人の消費行動もモノからコトに変わり、商品の機能や価格ではなく体験で語られるようになりました。しかし、その体験も飽和となりつつあります。

そうなった時にどうすべきか。

その突破口として、「結局はブランドの人格が共感のポイントになる」ことをBIOTOPE代表の佐宗さんは対談記事でお話していました。

社会において実現したい価値(企業の存在意義:パーパス)、その思想(メッセージ)が伝わることで、そのブランドの輪が広がり(共感)、大きくなっていく。

この感覚は、ブロックチェーン技術を応用した分散型社会の在り方にも似ていて、実現したい価値に共感する=顧客(ファン)はそれを支援する協力者という認識がこれからの時代、重要なテーマとなってきそうです。

最後までお読みいただきありがとうございました。



2018年発表のデザイン経営宣言の概要(PDF)
デザイン経営宣言

デザインにぴんとこないビジネスパーソンのためのデザイン経営ハンドブック(PDF)
デザイン経営ハンドブック:特許庁

ビジネスパーソンに向けた、デザイン経営の事例集を取りまとめました
経済産業省